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変革を成功させるためには、変革を「成功」させる必要がある

経営改革を進める際の重要な要素の一つとして、変革管理(チェンジマネジメント)という領域があります。企業が大規模な変革を行う際、従業員や関係者はこれまでと全く異なる業務に移行することを求められたり、時にはリストラのような厳しい状況に直面することもあります。そんな中で、変革をスムーズに進めるために、従業員が新しい業務に迅速に適応できるよう支援したり、抵抗勢力を説得したりといった活動を、チェンジマネジメントと呼びます。この領域に特化した専門のチームを持つ大手経営コンサルティング会社や組織コンサルティング会社も存在します。

 

チェンジマネジメントには様々なアプローチがありますが、成功のためには以下の要素が共通して重要視されています。

  • トップマネジメントによる強力な意志表明とコミットメント
  • 役員や従業員、その他の利害関係者に対する適切なコミュニケーション
  • 変革前の十分なトレーニング
  • 変革を受け入れるためのインセンティブの導入

これらはどれも欠かすことのできない要素です。

もうひとつ加えるとするなら、改革を成功させるためには、小規模でも部分的でも構わないので、成功事例を早期に実現し、その成果を関係者に対し可視化することが重要です。人は目に見えないものや、触れたことのないものに対しては不安を感じやすいものです。しかし、成功した事例を見ると、「自分もやってみよう」という意欲が湧いてきます。また、人は「勝ち馬」に乗りたがる傾向があります。一度新しいやり方が成功し、それが組織内で称賛されると、他の人々もその方向に一斉に動き出すものです。このような成功事例が生まれると、組織全体に変革へのモメンタム働いてきます。

 

(経営学者ジョン・コッターも、著書「変革8段階モデル」の中で、「短期的勝利」が大事なステップのひとつであると書いています。)

 

この現象を逆手に取って、経営変革を推進する手法もあります。大きな成功とは言えない場合でも、「成功を演出」するのです。例えば、社長が成功事例として社内で共有したり、外部メディアに成功事例として取り上げてもらったりします。まずはイメージ先行で推進し、やがて中身が伴ってくるという状況を作り出すことができます。

 

変革を成功させるためには、関係者に対する直接的なコミュニケーションだけではなく、こうした人の心理を利用したウラ戦略も不可欠です。